業務内容
国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」では、材料の無容器プロセッシングや結晶成長、燃焼現象の観察等を通じ、物質・物理科学分野の優れた科学研究が行われています。ISS退役後は、長時間の微小重力という稀有な環境を活用する地球低軌道(LEO)での研究・開発の舞台が、ポストISS拠点に移行すると想定されます。「きぼう」で培った物質・物理科学分野の実験環境を民間事業者が運営主体となるポストISS拠点で切れ目なく継続するためには、「きぼう」利用を通じて蓄積してきた地上からの遠隔操作技術や微小重力環境下での実験技術を発展させて、ポストISS拠点の装置搭載条件、多様なユーザの実験ニーズ、費用対効果を総合的に満足するポストISS用の宇宙実験システムを新たに整備する必要があります。ポストISS時代に向け、実験ユーザや民間事業者等の多くの関係者と連携しつつ、LEO利用をアカデミアや産業界に拡げていく非常にやりがいのある業務です。
本公募では、国内外のステークホルダーとの技術調整を行いつつ、ポストISS拠点に搭載する物質・物理科学分野の実験装置およびその運用で必要となる装置固有の地上機器から成る実験システムの構築、ならびに当該実験システムの運用に係る技術実証に積極的に取り組んで頂ける方を募集します。具体的には、以下の業務に従事して頂きます。なお、(1)および(2)ともに、「きぼう」に現在設置されている実験装置の地上からの運用に参加頂き、そこで得られた知見を実験システムの開発等に活かして頂く予定です。
(1)ポストISS拠点で使用する物質・物理科学分野の実験装置を開発する業務
「きぼう」での軌道上実験、具体的には溶融した高融点材料の熱物性取得実験や固体材料等の燃焼特性の評価実験などの実績を踏まえて行う以下の業務です。
・装置の開発仕様設定(実験要求で求められる機能・性能、安全・信頼性要求、検証要求、適用する設計要求基準の具体化など)
・装置製造会社による設計や検証計画の審査、試験の立ち合い、試験データの評価
・有人宇宙機に求められる安全性・信頼性に係わる審査対応
(2)装置固有の地上機器開発、運用方法の構築と、実験システム全体の技術実証
民間事業者を含む新規ユーザが主体的に実験運用を実施できるようにする以下の業務です。
・「きぼう」のように訓練された運用管制専門要員主体で運用するのではなく、ユーザ自身が自らJAXAの敷地外から主体的・効率的、かつ安全に実験装置を運用するための装置固有の地上機器の開発、ならびに運用方法・手順・ルール等の整備
・(1)で開発した軌道上の実験装置と地上機器を組み合わせた実験システム全体が期待通りに運用できることを確認する技術実証対応
本求人では、物質・物理科学分野における宇宙実験の実現に向けた業務を中心に行って頂きますが、将来的にはユーザからの多様な宇宙実験の要望に基づきJAXAの立場で実験ミッションの実現に向けたマネジメントをけん引できる人材、具体的には、ユーザの実験要求や実験特性、上位システム等との技術的制約や運用性・安全性等の制約、地上運用システムとのインタフェース等を十分理解しつつ、ステークホルダーとの調整と業務の取り纏めを円滑に行うことのできる人材を求めます。
JAXAが実施してきた「きぼう」利用の経験やノウハウを継承するとともに、ポストISS拠点に搭載する実験機器の開発等を通して、ポストISS時代における搭載機器の設計・運用に係る最新の技術情報・知識をいち早く得られるのが本業務ならではの強みです。この経験を活かして、LEO以遠にも拡大する宇宙環境利用ミッションの最前線で活躍できる人材へと成長して頂くことを期待します。
< 変更の範囲 :機構が定める業務の範囲 >