業務内容
人工衛星は、気象観測、航法、通信といった社会にとって不可欠なインフラとなりましたが、近年は民間企業や宇宙開発新興国の参加などにより、宇宙活動のすそ野が急速に拡大しています。また、大規模な衛星コンステレーションを活用したサービスの展開、小型衛星やキューブサットの利用増加とそれらを打ち上げるロケット打ち上げ数の増加も相まって、特定の軌道領域においては宇宙物体の混雑による衝突リスクや宇宙デブリの増加に対する懸念が深刻化しています。
JAXA(安全・信頼性推進部 システム安全・軌道利用安全推進ユニット)は、日本の宇宙開発の中核機関として、人類による宇宙への継続的なアクセスや宇宙空間の持続可能な利用を推進すべく、上記の課題に対して他国の宇宙機関や国連等とも協力しながら国際的な規範・ルール作りや技術標準等の整備に取り組んでいます。それらの規範・ルールや技術標準等が宇宙開発の現場に適切に実装されるためには、適合性を確認するための評価手法の設定や、ツール整備、サポートデータの蓄積等も必要です。また実際に開発/運用に関わる様々なステークホルダ(JAXA内外)との連携も必要になります。
今回、当ユニットの主要業務の1つである以下の業務に従事して頂ける方を募集します。
【軌道利用の安全確保】
・軌道上における人工衛星の衝突防止やスペースデブリの発生防止管理
(デブリを増やさないだけでなく、デブリから人工衛星を守るための防護設計推進等を含みます)
・宇宙から地球に再突入する物体のリスク評価やリスク低減対策の推進
・将来的な宇宙交通管理の枠組み、規範構築に係る国内外の協議への対応
具体的には、以下に示す業務を他のメンバーと分担、協力しながら遂行していただきます。
(1) 技術基準の整備、維持に関する業務
JAXAではスペースデブリ発生防止標準(JMR-003)、人工衛星の衝突リスク管理標準(JMR-016)等の機構独自の標準を定め、自らのプロジェクトに適用していますが、これらが最新の国際標準や技術動向に沿って維持されるよう、関連の国際枠組み(国際機関間スペースデブリ調整委員会やISO等)に参加して国際ルールに関する協議にも対応しています。
(2) 技術基準への適合性評価や、評価活動をサポートする業務
技術基準を定めても、その意図が適切に宇宙機の開発や運用に反映されなければ意味を成しません。また、場合によっては要求適合性を確認するために特定の手法やツール等を用いた検証が求められる場合があり、それらが開発の中で適切に履行されるよう客観的な評価を行いつつ、開発担当者にコンサルティングするなど技術評価の支援も行っています。
(3) 技術評価に必要なツールを整備、維持する業務
以下のような技術評価を個々のプロジェクト担当がゼロから行うのは技術的にもコスト的にも合理的ではないため、共通で使えるツールを整備し提供しています。また、技術標準等と同様に、このようなツールも最新の技術や国際動向に対応したアップデートを行う必要があり、そのための国際協力活動や技術検討も行っています。
・宇宙機が大気圏に再突入した際の溶け残りやリスクを評価するためのツール
・レーダーでは捉えられないような細かいデブリが人工衛星に衝突した際の被害予測を行う(≒シールド等による防護対策の効果が確認できる)ツール
・地球低軌道で運用を終了した人工衛星が、残り何年で地球に再突入するかを予測するツール 等
(4) ツールの維持、更新に必要なデータ取得試験や解析等の実施
新しい素材等の溶融性、特定の部材にデブリが衝突した際の貫通/非貫通の条件などを把握するための基礎データ取得や評価解析等を行って、評価手法の改善やツールのアップデートに活用しています。
(5) JAXA外部の事業推進に係る支援
JAXAが自ら行うプロジェクトだけでなく、政府資金や民間資金で宇宙活動を行う事業者や、宇宙活動の許可審査を行う内閣府等に対する技術支援も行っています。
また、当ユニットの他の主要業務(「システム安全」や「惑星等保護」)の内容と相互に関係を有するものであるため、着任後は本人の適性や要望も考慮しつつそれらに関する業務にも対応して頂く可能性があります。
【システム安全】
・宇宙機の開発~射場作業~打上げに係る要員や施設の安全確保
・ロケットの打上げに係る(第三者的な)安全評価
・打上げ機の回収など、新規技術の実装に必要な安全要求等の検討や整備
【惑星等保護】
・探査機による惑星等の汚染防止やサンプルリターンによる地球環境の汚染防止
上記業務への対応のために特定専門分野の高度な知識を求めるものではありませんが、技術基準~設計/運用要求~適合性評価~実証(運用)というライフサイクルを通した幅広い活動であるため、比較的大規模なシステムの開発や運用を経験されている方、国内外を問わず様々なステークホルダとの協力、調整に前向きに取り組める方、そして今後の当該業務において中心的な役割を担って頂くことを期待していますので、長期に渡って私たちと一緒に業務を続けていける方が望ましいと考えています。
世界の宇宙活動は産業構造も含めて大きな変革に直面しており、この影響を受けて宇宙空間の状況も大きく変化しています。このような変化を前向きに捉え、積極的に行動できる方にとって、本業務はルール作りから関与しながら専門性を高めることができる、非常にやりがいのある仕事です。
< 変更の範囲 :機構が定める業務の範囲 >