業務内容
【H3ロケット等に適用する「自律飛行機能(自律飛行安全システム)」開発業務について】
現在開発中のH3ロケットは年間6機の打上げを想定して設計された機体ですが、昨今の宇宙空間利用の拡大、加速化に伴い、人々の生活に欠かせなくなった人工衛星等をより安価に、高頻度に宇宙空間に届けるための輸送システムの開発が急務となっています。地上では測位技術など宇宙インフラを活用した自動運転技術(自動車、農業用機械、ドローン等)の開発が活発に進められているところですが、宇宙への輸送手段であるロケットにおいても、従来人手に委ねていた打上管制業務の一部を自動化してゆく事が、高頻度化打上げ実現のために求められています。
【H3ロケット等に適用する「静止衛星Lバンドネットワークを用いた軌道上テレメトリ中継システム(InRange)」開発業務(国際協力プロジェクト)について】
「InRange」とは、Viasat社の静止衛星Lバンドネットワーク「ELERA」を利用し、グローバルにロケットの軌道上テレメトリを中継することによりロケット追尾を行うサービスであり、ロケット打上げにおける従来の地上追尾局への依存を軽減する効果があります。「InRange」をH3ロケットに適用することにより、打上げ時において、地上追尾局の可視範囲に依存することなく軌道決定することができるようになるため、打上げ軌道を最適化することが可能となります。また、上記の自律飛行安全システムと組み合わせることにより、宇宙機を所定の軌道に投入するために必要な推進薬量が削減されたり、より重いペイロードを打ち上げたりすることも可能となります。
「InRange」をH3ロケットに適用することを目指す本業務は、英国宇宙庁(UKSA)とJAXAの二国間協力の枠組みのもとで実施しています。英国宇宙庁は、International Bilateral Fund(※)の仕組みを通じ、Viasat社に対し、同社のグローバルな静止衛星Lバンドネットワークを用いた、打上げロケット用の新しい軌道上テレメトリ中継サービスの開発について、開発資金の一部負担を行います。日本側は、H3ロケットのテレメトリ送信機及びアンテナ開発、ロケットシステムの適合性評価、既存の地上設備の対応改修を担当します。また、最終的にはH3ロケットを用いた地上検証及び飛行実証を計画しています。
(※)英国宇宙庁におけるファンディングの仕組みであり、英国事業者と国際パートナーとの宇宙分野における協力を通じて、英国国家宇宙戦略を実現するための能力及び研究基盤の発展に寄与する提案を公募し、助成するもの。
本公募では、以下の業務について、当機構内関係者や関係企業・機関(海外含む)と連携しながらご担当いただける方を募集します。
なお、ご応募いただいた方の専門性やキャリア等を踏まえ、(A)または(B)のいずれか、もしくは両方をご担当いただきます。
(A)H3ロケット等に適用する「自律飛行機能(自律飛行安全システム)」開発業務
次世代のロケットやロケットに代わる将来の宇宙輸送システムに必要となる自律飛行安全システム(飛翔中のロケットの状態を監視し、異常な状態を検知した場合は速やかに安全化処置に移行するシステム)の開発を担当いただける方を募集します。なお、自律飛行安全システムは、機構が開発を担う基幹ロケットに留まらず、民間小型ロケットへの転用も可能な技術であるため、他の民間ロケット開発事業者等と開発成果を共有したり、連携したりするケースも想定されます。具体的には次のような業務を担当していただきます。
① ロケットや機構が定める安全規定等の要求を踏まえつつ、ロケット飛翔中の状態を正確に把握し、異常な状態を検知した場合は自律的に安全化(飛行中断)処置を確実かつ安定的に行うためのシステムの開発と維持
② 自律飛行安全実現のために必要なロケット機体システムの開発(当面は、H3ロケットのアビオニクスシステムへの適用を想定)
③ 上述する自律飛行安全システムの運用、維持、発展に必要な将来を見通した計画の立案と実行
④ 民間ロケット事業者との開発成果の共有、連携
(B)H3ロケット等に適用する「静止衛星Lバンドネットワークを用いた軌道上テレメトリ中継システム(InRange)」開発業務(国際協力プロジェクト)
「InRange」開発についてご担当いただける方を募集します。また、「InRange」は、H3のみならずイプシロンSロケットや、民間小型ロケットへの転用も可能な技術であるため、民間ロケット開発事業者等との開発成果の共有や連携する可能性も想定されます。「InRange」のシステム要求を理解した上で、次のような業務を担当していただきます。
① 送信機やアンテナ等の機器開発
② 「InRange」を適用したロケット機体システムの開発及び適合性評価
③ 「InRange」適用による地上設備等の改修のとりまとめ
④ 地上検証計画及び飛行実証計画の立案及び実施
⑤ イプシロンSロケットや民間ロケット事業者との開発成果の共有、連携
本業務を通じて、ロケットの自律飛行安全技術・テレメトリや通信等に関する技術開発に留まらず、ロケットシステムやロケットの打上運用に関する広範囲な経験・知見を蓄積いただき、中長期的には、次世代の宇宙輸送システムの技術開発を担うエンジニアとして、幅広く活躍していただくことを期待します。
●H3ロケット特設サイト
https://www.rocket.jaxa.jp/rocket/h3/special.html
- ●H3ロケットに適用する静止衛星Lバンドネットワークを用いた軌道上テレメトリ中継サービスの開発プロジェクト「InRange」に係る日英協力を開始
https://www.jaxa.jp/press/2023/10/20231005-1_j.html
●輸送系サイト「ピックアップインタビュー」
宇宙輸送技術部門の業務紹介をしていますので是非ご覧ください。
https://www.rocket.jaxa.jp/column/pickupInterview/
< 変更の範囲 :機構が定める業務の範囲 >